アリスは病室のベッドに寝転がったまま、自分の小さな手を上に上げて、病室の窓からこぼれおちる光をあびて、手を透かして見ていた・・
そしたら細くてちっちゃい指の間から、光が入って、まるで指先や手が、太陽の光の中で、透明に透けてみえるようだった・・
すると前に学校で習った「手のひらを太陽に・・」を想い出してた・・
「ぼくらはみんな、いきている、いきているからたのしんだ・・ぼくらはみんな・・」っていうところまで唄って、”うっ”となって止まった・・ ちょっとまた苦しくって、気持ちわるくなった。 でも学校にいた頃の学校から帰る前ほどではない。
「ああ、そうか、わたしまだ生きてたんだ・・」 なんかそんなフレーズが頭に自然に浮かんできた・・
なんだかもうアリスはこの間まで住んでたお家の中にいた自分がどうだったかも、忘れかけてしまっていた・・
なんだかもう”遠い”記憶の中にある自分をみているように・・
もうなんだか最近は自分が生きていたのかどうかもわからない感覚があって、お家にいたころのことは、きっとどこかに「しまっておきたい・・」のかもしれない、と想うようになってきた。「ああ、もう”じぶん”がなくなってしまって、何も感じなければいいのに、辛いことも何も・・」その時の自分は、そう想ってたから。
「ぼくらはみんな生きている・・」を手のひらをかざして唄うと「自分が今生きている」ことを、実感できた。またじぶんにそんな”ゆびさき”の「感覚」が戻って来るような気がして、かざしてる手の甲を反対の手の指で抓って、「あ、いたい!!・・」と感じることで、今自分がここにいることを”想い出して”現実に引き戻されることができた・・”あ、わたしここにまだいたんだ・・まだ生きてたんだ・・”って。。
そしたらその時、男の子がひとり、部屋の中に入って来た。
女の人なのか男の人なのかわからない感じの(すくなくともアリスにはそう見えた・・)ぷすっとした感じの白い白衣のスラックスを履いた女の人と一緒に入って来た。。ひとつ大きな”にもつ”の鞄をもって。
その男の子は入って来るなり、部屋を見回してたけど、”わたし”に気がついてるはずなのに、目も合わせないし、まるでアリスが”とうめい”になってしまっているように、彼の目には入ってないのかアリスが”そこ”にいるのにまるで存在しないかのように振る舞っていた・・
「あ、アリス、この子は新しい部屋の子よ。今日からね。」って忙しくしている看護婦さんが一瞬部屋に入って来て言って、「あ、ちゃんと自己紹介してね・・」って言ってまたすぐに出て行った。
その子はぶすっと、天井や視線を横にしながら、どこかちょっと遠くを見つめてる風に、窓の外の方を見たりしていた。 その付添いの人は、自分の”仕事”だけ終わったら、何も言わず、さっさとでていってしまった。。”その子”を置いて・・その子は、相変わらずアリスの方は、こんどはわかってるようだったけど、また見ないようにして顔を横斜めに向けていた。
「・・わたしはアリス。あなたは?」
ちょっと間をおいて話しかけてみたけど、やっぱり返事はしてこない。。
”話したくないのかな?”と想って、暫くそれ以上は何も言わなかった・・
すると”その子は”自分のベッドと言われた方に歩いて行って、大きめの旅行鞄みたいなのを”ひと蹴り”して、ベッドの方に近づける為に倒したまま、それを乗り越えて、ベッドに上がってみていた・・
その子はまるで”ライオン”のような綿帽子みたいな頭で、ふわふわっと周りにまあるく広がって、髪はちょっとオレンジがかった光に透けるとゴールドの色をしていた・・歳はちょっとアリスよりは上くらいだったけど、”おなじ小学生くらいだろうな・・”ってアリスは想った。(他の中学生以上みたいな人達は大人と混じった部屋にいたから・・) そしてでもそんな髪をしている小学生は、アリスの学校ではみたことがなかったからちょっと「ふしぎ・・」に想った・・
ベッドの上に寝転がって、その子は手を頭の後ろにくんで、”じ~~っ・・”と天上の方を向いて、何も言わずに暫くいていた・・
そしてアリスがちょっとみはからって「ねえ・・その頭どうしたの?元々その金色(ゴールド)なの?・・」 っていいうと、その子は機嫌が悪くなった風に、「そんなわけないだろ!・・」ってそっけなく言ってから、、くるりと下を向いて、ベッドの方に顔を向けて転がってた・・( 本当はアリスの方から初めて話しかけてくれて内心はちょっと嬉くもあったんだけどさ・・ )
それからまた、アリスは”きっとこの子は今話したくないんだな・・”って想って、ためらったけど「今テレビつけてもいい?アニメとかお笑いとかやってる時間帯だし・・」って、お家にいる時はこの夕方の”ひとり”のその時間帯だけが一番ほっとしてしあわせな気分にもなってたから、つけさせてもらう事にした・・
なんかテレビの中では「ばかぼんパパ」とかまっちゃん、はまちゃんが「四時ですよ~だ」で、ヘンなお笑いの大喜利をやっている・・ なんだか”くす・・ッw・・”って笑いそうになったけど、その子は相変わらず、ベッドの下の方に顔を向けたままだった・・
しばらくすると、何も言わないんだけど、顔をアリスとは反対側の壁の方に向けたままで、よく見てるとなんだかその子の”肩”がちょっと小さく波打ってるようにもかんじた・・
テレビの音でかき消されているけど、しばらくして”きっと泣いてるんだな”って想って、アリスもここに来た”さいしょ”の日を想い出した・・ 親戚のおばさんがついて来てくれはしたたけど、ちょっとメンドクサそうで、すぐに帰ってしまった。。その頃の”こども部屋”はアリスひとりだったし・・看護婦さんも来たあと、”ひとりぼっち”になったら、”なんでこんなところにいるんだろう?・・”って想ったら急に悲しくなって、一晩中泣いていた・・ ”きっとこの子も同じなんだろうな・・”って”こころ”に想いながら、今日はそっとしといてあげよう・・と想って。。
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